国策広告の常連、國華産業の広告。今産業界に求められている役割をシンプルに表現。
内容
「決戦だ 造れ 送れ 撃て
神奈川県下 國華産業株式会社」
掲載:昭和19年7月
神奈川新聞においては、国策をテーマにした企画連合広告は太平洋戦争に入って初である。所謂、名刺広告と同じようなものだが、予めイラストを定めたひな形を用意して、広告主を募ったのであろう。標語が広告主に相応しい内容になっているのがとても興味深い。戦争末期になるにつれ連合広告から企業単独広告になっていくが、その文言は戦意高揚から増産、特に飛行機の増産に変化していく。また、国策にのっとった告知広告や国家統制のもとで国策協力機関として設立された各種統制組合等の広告も紹介していく。

6月に続く日本精工の広告で、先月も使ったテンプレートである。早速サイパンの激戦を取り上げて飛行機増産を読者に訴えているが、7月18日の大本営発表で全員壮烈なる戦死を遂げたと報道されている。
内容
「お互に眼を閉じてサイパンの血戦を偲ぼうぢゃないか
量を誇る敵米兵の爆撃と砲声の下を、一死報国の白刃を□して敵陣に肉迫突入する皇軍将兵の獅子奮迅の状が瞼に浮んでくるではないか。米国の頼みは量だ。砲弾だ。飛行機だ。この量にわが将兵が苦闘しているのだ。
昭和の元寇は今だ。皇国の興廃は今だ。必死増産は今だ。 今こそ皇国の総力を結集して飛行機を造る時だ。送る時だ。今こそ職場の全力を絞り出して飛行機を造る時だ。送る時だ。
神奈川県下 日本精工株式会社 藤沢工場」
掲載:昭和19年7月

6月に続く石川島航空工業の広告で、初めてのテンプレートで、アメリカ国旗を我軍戦闘機が突き破るという斬新なデザイン。「白い鬼」とは新しい言葉であるが、戦況の悪化に伴い表現内容もどんどんエスカレートとしてきているようだ。
内容
「心の目で凝視せよ 心の耳をすまして聞け
南の島々からわが将兵の叫ぶ声が聴える。叫ぶ姿が見える。
白い鬼どもが飛行機を兜にかぶって砲爆弾を鎧に着て、傍若無人に押し寄せて来ているのだ。これを叩き潰すには飛行機だ。飛行機こそ勝敗を決するものだ。
来月の千機より今の百機だ!われらの飛行機で米艦隊を米空軍を叩き潰すは今なのだ
無欠勤、無遅刻、残業残業、徹夜徹夜 増産に必死は今だ
石川島航空工業株式会社」
掲載:昭和19年7月

4月以来の浦賀船渠のテンプレート広告。まさに核心をついている。補給を軽んじたことがこの戦争の敗因の一つに挙げられているが、気がつくのが遅すぎたのだ。
内容
「わが皇軍は世界一の強兵だ
十分の飛行機と弾薬の補給さへあらば、正に無敵の強兵なのだ。太平洋戦争は彼我の補給力が勝敗を決定する補給戦なのだ。 補給戦の本隊は造船部隊である。 打込む一鋲遅れれば 敵の侵寇は一歩迫るのだ 一隻の建造遅れれば 昭和の元寇は一里迫るのだ
攻勢転移はわれらの双肩に 造船部隊の双肩に! 今こそ増産の突撃にいざ突っ込め!
神奈川県下 浦賀船渠株式会社」
掲載:昭和19年7月

日立造船も国策広告の常連であり、今月は新しいテンプレートである。飛行機増産の大合唱の中、問答形式で造船の重要性を訴えている。
内容
「船は飛行機だ
問「愈々重大戦局に直面しましたね。勝敗を決するのは一にも飛行機、二にも飛行機で、世は正に航空決戦時代というわけですな。
答「そうです。そこで吾々造船戦士の任務は極めて重大になったわけです。
問「おやッ、どうして造船が重大になったのですか、何か飛行機につながりがあるというわけですか。
答「あるもある、大ありなんですよ。飛行機生産の資材を運ぶのも船なら、飛行機を飛ばす油を運ぶも船で、船は飛行機の母ということになります。
問「なるほど。造船戦士の敢闘こそ勝敗の岐れ目ということになりますね。
答「その通りです。私どもは今や皇国の運命を據うた心算で必死の敢闘をしているのです。サイパン島の将兵に応うる道は決死増産以外にありません。
神奈川県下 日立造船株式会社神奈川造船所」
掲載:昭和19年7月

国策広告の常連、國華産業の広告。今産業界に求められている役割をシンプルに表現。
内容
「決戦だ 造れ 送れ 撃て
神奈川県下 國華産業株式会社」
掲載:昭和19年7月

7月2回目の日本精工の広告。新テンプレートを使い、今まではベアリング(工場を表す)から発する輪に飛行機を被せたイラストで飛行機の製造を表していたが、今度のはベアリングを通して新型飛行機(とってもスマートでジェット機の様)が生まれるという、もっとわかりやすいデザインに変更している。本文も過激化している。
内容
「飛行機を送れ!
不遜無礼なる驕敵を我等の飛行機でたゝきに、たゝけ 南の海のにがい 苦しい海底へ たゝきこむのだ
飛行機を造れ! 決戦の空へ飛行機を送れ 憎い米鬼を我等の飛行機で打ちのめすのだ
増産だ!増産だ!此の職場も戦場へ 連なる事を知れ!!
神奈川県下 日本精工株式会社 藤沢工場」
掲載:昭和19年7月

石川島航空工業、今月2回目の広告。文章は変えていないが、テンプレートを新しいものに変更している。
内容
「心の目で凝視せよ 心の耳をすまして聞け
南の島々からわが将兵の叫ぶ声が聴える。叫ぶ姿が見える。
白い鬼どもが飛行機を兜にかぶって砲爆弾を鎧に着て、傍若無人に押し寄せて来ているのだ。これを叩き潰すには飛行機だ。飛行機こそ勝敗を決するものだ。
来月の千機より今の百機だ!われらの飛行機で米艦隊を米空軍を叩き潰すは今なのだ
無欠勤、無遅刻、残業残業、徹夜徹夜 増産に必死は今だ
石川島航空工業株式会社」
掲載:昭和19年7月

今月2回目の日立造船の広告。前回のテンプレートを短く、文章も短くまとめた。
内容
「飛行機だ!飛行機だ! 船は飛行機の母だ。
太平洋決戦の時目前に迫る 何が何でも飛行機の増産だ。早く早くと前線の声が聞えるではないか。飛行機生産の資材を運ぶ船 飛行機戦闘の油を運ぶ船 今こそ決死の造船増産だ
神奈川県下 日立造船株式会社神奈川造船所」
掲載:昭和19年7月

大日本産業報国会の広告。全労働者に対する檄文。
内容
「敵国降伏 神州不滅
全国産報会員に告ぐ 職場大会を開け サイパンの英霊に応へよ
大日本産業報国会」
掲載:昭和19年7月

7月20日の海の記念日に合わせて出した横浜港3団体合同広告。 「海の記念日」とは、明治9年明治天皇の東北地方ご巡幸の際、灯台視察船 明治丸 で、青森から函館を経て横浜にご帰着された日。平成7年に「海の日」として祝日に制定された。
内容
「海の決戦愈々迫る 今日海の記念日 太平洋の怒涛本土を噛む 我は海の子、いざ海へ
横浜港運株式会 横浜海運局 横浜船舶荷役株式会社」
掲載:昭和19年7月

富士飛行機の広告である。求人広告欄に掲載されていたが、これは国策広告であろう。文章は昔と同じ。
内容
「航空機増産
一機でも多く我等の手で 決戦の空へ 飛行機を送ろう
神奈川県 富士飛行機株式会社」
掲載:昭和19年7月

昭和10年に富士電機から分離設立された富士通信機製造とは、現在の富士通である。飛行機にZ旗を合わせたイラストに過激な文章で敵愾心を煽る広告となっている。
内容
「敵愾心 「怒髪天を衝く」という諺あり まことかの青き眼のけだものら 憎しみて余りあり 皇軍玉砕の報到るとき かなしみかければ深きにまして はらからと履帯のもとに踏みゆける かの 鬼畜を憎め なほ白き肌に 歯をもてあたれ
神奈川県下 富士通信機製造株式会社」
掲載:昭和19年7月

医師会の広告。自らを軍医と位置づけ戦いに臨む覚悟を表してる。「聴診器に増産はつながる」とのくだりは泣けてくる。イラストの飛行機と輸送船は使い回されているもの。
内容
「船を造れ 艦を造れ 弾丸を造れ 食糧を作れ だがこの一切の基本は”人”だ 逞しい身体と強固な意力とが増産の推進力なのだ 「国防衛生」とは空襲時下の使命だけを指すのではない 総力戦の「増産戦線の軍医」の役割こそ、これなのだ。 征くぞ 皇民医療に 救護の堅陣に 皇国の体・みたみわれ・衛れ・まづ勝て病敵に 我ら聴診器に増産はつながる いざ奮起挺進せむ
神奈川県医師会」
掲載:昭和19年7月

大阪造船所の広告である。求人広告欄に掲載されていたが、これは国策広告であろう。こちらの会社も何回か国策広告を出している。
内容
「決戦だ 増産で撃滅だ
一機でも多く我等の手で 決戦の空へ 飛行機を送ろう
神奈川県 株式会社大阪造船所」
掲載:昭和19年7月

非常な長文広告であるが、金属回収に協力せよとのお願いである。米英空軍のマークに撃滅の文字が乗せられている。
内容
「鉄返り材突撃回収 直視せよ太平洋を!
敵米英は物量をたのみ我本土に迫る マリアナ諸島水域に厖大な鉄量を日夜別かたず打込んで居る銃火器には銃火器を!航空機には航空機を!艦船には艦船を! 同胞の魂をこめて生産されたすべての兵器は忠勇無比な皇軍の心身一如をもって戦われ玉砕以上死を乗り超えての敢闘がたった今の一瞬に繰返されている、皇土を護り、皇国と共に生き抜く精神力をもつて敵の厖大な物量に向かって果断なき戦は続けられている!日本に時を藉すなは敵の進攻略だ。第一線より何事においても敵に勝て、敵を撃滅せよと心魂の叫びが聞へてくる。
我等県民にも敵米英を殪す物量生産の一端を據ひ暑熱を超えて精進している一体がある。誰だ!それは神奈川県金属決戦回収工作隊!鉄には鉄を!鉄生産陣の総進撃に今!返り材回収陣の総突撃は続けられている。魂こめて鉄は回収されてる!その鉄は敵米英を殪さずばやまじと溶鉱炉の中に躍進している!魂のこもった兵器は生産される その兵器が皇軍将兵の手に渡された時!大勝の叫びが第一線より伝わって来る。
横浜市西区平沼町 神奈川県決戦金属回収工作隊 金属回収統制株式会社 神奈川県事務所」
掲載:昭和19年7月

上と「同じテンプレートを用い、同じような長文広告。東京芝浦電気である。官民挙げてすべてを投げうち勝利を目指す必死さが伝わってくる。
内容
「念頭、撃滅あるのみ 行動、勝利の増産あるのみ
驕児ルーズベルトは大統領四期当選を覗って今や人気取り策に汲々且つ必死だ。狂米の総反攻はこの現れの一つであるが、ルーズベルトは自分のためには厖大なる艦船飛行機兵員の犠牲も意に介さず、マリアナ諸島攻略に全力を傾注している。わが本土を覗うも又これがためである。
人類の敵ルーズベルト、悪魔の手先メリケン兵に思い知らしてやる絶好の機会は刻々に迫る。
わが危険の近づくことはわが勝機の近づくことでもある。ぐっと引寄せておいて叩きつける。
今こそこの勝機目前に迫ったのだ!だが勝機を逸せず大勝せしむるには十二分の兵器がなくてはならぬ。歯には歯なのだ。目には目なのだ。物量には物量なのだ!
われら生産戦士の決死敢闘こそ勝機をして決定的大勝たらしめる原動力だ
マリアナ諸島のわが将士は敵の爆弾銃砲下に血みどろの戦いを闘っている これを偲べば残業しても疲労を感じない。徹夜しても眠気もさゝぬ筈だ やろう、断じて増産をやろう! 勝とう、断じて増産で打勝とう!
東京芝浦電気株式会社 重電機製作所(旧鶴見支社)」
掲載:昭和19年7月

国策広告の常連、國華産業の広告。7月に掲載したものと同内容で、少しだけデザインを変えている。このデザインで9月にもう一回掲載している。
内容
「決戦だ 造れ 送れ 撃て
神奈川県下 國華産業株式会社」
掲載:昭和19年9月

常連、日本精工の広告。今回は過去に2回使ったテンプレートを利用し、文言を変更してきている。そもそもこのベアリング入のテンプレートは日本精工専用であろう。
内容
「驕米の反攻は飛行機の数が力だ 乗員が腰抜けでもその数は馬鹿にはならない 攻勢転移は一に飛機だ 歯には歯だ 量には量だ 今こそ決死増産だ 神奈川県下 日本精工株式会社 藤沢工場」
掲載:昭和19年9月

前回は飛行機生産を前面に出していたが、今回は本業の船である。しかし、連呼する掛け声とは裏腹に、船を造ろうにも資材が底をついていたのだ。
内容
「こゝに敵の野望を砕く一つの道がある 船だ、船だ、船だ!船を造ろう この船は鉄をはこんでくる この船は油をはこんでくる この船はボーキサイトをはこんでくる この船は つはものを 弾丸を 飛行機を つんで まっしぐらに 戦いの海をゆく この船が波濤を越え 敵潜をふみつぶし 爆撃のスコールをつき 勝利の日へ ひとすじの航路をひく 船だ、船だ、船を造ろう! 神奈川県下 日立造船株式会社神奈川造船所」
掲載:昭和19年9月

19年4月と同じテンプレートだが、もちろん、内容は違っている。造船工場であるが、まずは飛行機の必要性を訴え、そのためには船だ。という論法で攻めている。
内容
「肉を切らして骨を断つ秋が愈々迫った
米鬼の骨を断つ日本刀は”飛行機”だ 飛行機製作の資材を! 燃料を! 運ぶものは船だ 造船こそ勝利の突撃隊だ!
神奈川県下 浦賀船渠株式会社」
掲載:昭和19年9月

同社は毎回格調高い文章で攻めてくる。イラストも写実的であり、広告にかける意気込みが感じられる。
内容
「勝利の道は飛行機増産に通ず! 物量の悪魔米機を正義の神意”皇機”で今こそ討つ秋だ 悪魔の翼を撃砕するものは神の翼だ
石川島航空工業株式会社」
掲載:昭和19年9月

富岡兵器製作所は海軍航空機用の機銃の専門工場であった。イラストはこの新鋭機銃であろうか。原型は九九式二〇粍機銃であろう。
内容
「見よ! 吾が新鋭機銃の威力を 敵機は火を噴いて墜ちる 今日も前線の空で我荒鷲は一撃のもと仇敵をたゝいている 送れ、飛行機を!造れ、兵器を! 吾等の造る兵器は 直接鬼畜をたをすのだ 吾等の懸命な努力が 直接将兵の力となるのだ 総てが戦場だ 今日が決戦だ 勝ち抜く為に さあ頑張ろう
神奈川県下 大日本兵器株式会社富岡兵器製作所」
掲載:昭和19年9月

5月に続き2回目の広告。前回同様のテンプレートで、内容は変更しているが、飛行機を鷲に例えるのが好きと見える。
内容
「猛鷲の眼は憤怒に燃え ハガネの翼は 正に搏たんとす 彼らの不正不義は 神すでに怒り給う 猛鷲よ怒れ! ハガネの翼で討て 不正の米鬼を、不義の英獣を われらは造る われらは送る この猛鷲を この荒鷲を 尽忠の生命をこめて! 神奈川県下 日本飛行機株式会社」
掲載:昭和19年9月

徴兵では陸軍に取られてしまうので海軍も必死で兵隊を集めていたことがわかる広告である。
内容
「必勝啓発第四号(切り抜いて取って置いて下さい) 昭和二十年度海軍志願兵徴募検査執行日発表 但し神奈川県
青少年に告ぐ 悪魔米英を撃滅するためだ 蹶起せよ 奮起せよ 馳せ参ぜよ 空の大決戦場へ!海の血闘場へ! (24会場と各会場の検査期間)
海軍志願兵徴募規定 一、兵種 水兵、整備兵、機関兵、工作兵、衛生兵、主計兵、少年水測兵、少年電信兵 少年飛行兵(乙種予科練習生) 少年電測兵、軍□兵 二、年齢
自大正十三年十二月三日出生至昭和六年四月一日の生 三、志願書提出先 最寄りの市区町村区役所
海軍志願兵相談所開設 志願兵ニ就イテ解ラナイ処ガアッタラ必勝ノ道啓発協力会内海軍志願兵相談係へドシドシ御質問下サイ(但シ必ズ自分ノ宛名ヲ鮮明ニ書キ込ンダ返信用不当ニ七銭切手ヲ貼ッテ同封ノコト)
必勝の道啓発協力会 東京都京橋区木挽町五ノ一 」
掲載:昭和19年9月

造船会社は飛行機の母は船と云い、工作機械会社は工作機だという。優先順位の第一が飛行機なのは共通認識だが、その飛行機を造るには?という論法の広告が増えてきている。
内容
「第一線の要望にこたえ飛行機を送れ!そして、その飛行機は工作機より生まれるのだ 工作機は飛行機の母だ!それを造る我等の手は即ち敵を制する手だ、勝つためだ、頑張ろう。莞爾として悠久の大義に生きてゆく神兵の悲願と血の叫びにこたえる道は唯一つ増産あるのみ 造れ飛行機を!造れ工作機を! 神奈川県大日本兵器株式会社湘南工場」
掲載:昭和19年9月

国策広告の常連、今回はイラストのみのシンプルなもの。今まさに手りゅう弾を投げようとする兵士の姿だが、何を意味するのか。
内容
「佐倉鋼鉄工業株式会社」
掲載:昭和19年9月

日本精工今月2回目の広告。テンプレートは今年6月のものを使い回し。
内容
「戦局危急にして皇国の興廃方に此機に存す 歯を食しばって増産に挺進敢闘だ 我等の双肩に国家の運命がかゝつてるのだ体当たりで増産だ
神奈川県下 日本精工株式会社 藤沢工場」
掲載:昭和19年9月

日本製鋼所初広告。同社は北炭と明治40年英国のアームストロングとビッカースとの共同出資により室蘭に設立された兵器製造会社。昭和11年には横浜製作所が操業開始。ヴェルニー公園に展示されている戦艦陸奥の主砲も室蘭の日本製鋼所製である。
内容
「量と質と時 目睫に迫った決戦に驕米を叩きつけヤンキーの抱く幻想を粉砕して勝利を確定するものは 量である 質である 時である ”日本製鋼魂”とはどんなものか。増産突撃の戦果で示そう 神奈川県下 日本製鋼所」
掲載:昭和19年9月

今月2回目の広告。まず、勝利に向けて飛行機の必要性を訴え、飛行機を造るためには船が必要とまとめるのが最近の傾向である。飛行機も船も登場せず溶接作業のイラストだけというのも味がある。なお、月末に全く同じ広告ものを出している。(3回目)
内容
「″第一線部隊に其の要望通りの航空機を送り思う存分活躍せしめたい念願で一杯である゛ 米内海相の言や切々として国民の肝をつらぬく 勝利は飛行機に在り 一にも二にも三にも 飛行機こそ絶対だ 飛行機の資材と油を運ぶのは船だ 造船増産こそ絶対だ 神奈川県下 日立造船株式会社神奈川造船所」
掲載:昭和19年9月

下町工場の広告でもこのような標語を掲げている時代。シャコ万力とは材料などの保持や固定に使う機材である。資材呈供歓迎の文言からは、シャコ万力を造る材料も不足していることが伺われる。
内容
「今こそ増産に総進軍だ! 飛行機ノ増産ハ必勝ノ鍵ダ! 木造航空機用 木造造船用 鍛造加工シャコ万力 在庫品豊富 各寸法注文製作ニ應ズ(資材呈供歓迎) ナガヰ製作所 営業所 下谷区竹町二ノ十〜」
掲載:昭和19年9月

富岡兵器製作所今月2回目である。機関銃製造工場らしくイラストは機関銃、そして敵機を狙っているのだろうか。
内容
「見よ! 今日も前線の空で我荒鷲は一撃の下仇敵を叩いている 送れ飛行機を!造れ兵器を! 吾等の造る兵器は直接鬼畜をたをすのだ 勝ち抜く爲にさあ頑張ろう
神奈川県下 大日本兵器株式会社富岡兵器製作所」
掲載:昭和19年9月

白抜きのアルミニュームの文字がアルミっぽさを出している。どちらかというと求人広告寄りになるが、同社は18年11月に国策広告を出していることからこちらで紹介する。
内容
「アルミニュームは飛行機の母だ! 来たれ 増産の戦場へ!!
昭和電工横浜工場」
掲載:昭和19年9月

7月に続く広告。同じテンプレートを使用しているが、内容は本業である通信機の必要性を強くアピールしている。 因みにZ旗のイラストは、日本海海戦を意味しており、この海戦の勝因の一つが無線機の活躍(バルチック艦隊発見の報告など)であったのだ。
内容
「近代戦は通信機から 航空決戦も 艦隊決戦も 通信機の優秀にあるのだ 断じて造れ 優秀通信機を
神奈川県下 富士通信機製造株式会社」
掲載:昭和19年9月

常連会社であり、このテンプレートは他社も使用している人気テンプレートである。しかし、少しだけレイアウトを変えているのがいじらしい。
内容
「勝利の鍵 正に飛行機 飛行機さへあらばと前線将兵は歯ぎしりしていると伝う 悲痛なるこの叫びは我等飛行機生産戦士の胸を咬む 頑張るのは今だ 増産するのは今だ 神奈川県下 石川島航空工業株式会社」
掲載:昭和19年9月

今月2回目の広告であり、前回と同じテンプレートを用いている。云い方は変えているが、内容は飛行機増産には工作機械も増産しなければならないということ。
内容
「学徒の通年動員 女子挺身隊の出勤等で飛行機工場の手は揃った 工作機さへあれば忽ち三倍五倍の増産だ 我等の責任は重い 飛行機増産の責任を双肩に工作機増産に突撃だ 神奈川県下 大日本兵器株式会社湘南工場」
掲載:昭和19年9月

日本製鋼所今月2回目の広告。文言は同じだが、イラスト変更している。敵機を撃墜した勇ましい情景である。
内容
「量と質と時 目睫に迫った決戦に驕米を叩きつけヤンキーの抱く幻想を粉砕して勝利を確定するものは 量である 質である 時である ”日本製鋼魂”とはどんなものか。増産突撃の戦果で示そう 神奈川県下 日本製鋼所」
掲載:昭和19年9月

富岡兵器製作所今月3回目である。2回目のテンプレートを継続使用しつつ内容は変更している。なんとB29の名前が登場した。これから全国民にこの名前が刻み込まれていくのだ。
内容
「我等の汗でB29を撃墜せん 不遜傍若にもわが皇土侵冠を狙うB29、これを撃墜するものは我等の作る兵器だ。即ち我等の汗の結晶が米機を撃墜するのだ 今一段と頑張ろう 今一段と増産せん
神奈川県下 大日本兵器株式会社富岡兵器製作所」
掲載:昭和19年9月

9月2回目の日本精工の広告。しかし、7月のテンプレートを使い、文言は前回のものを使用と手を抜いている。
内容
「戦局危急にして皇国の興廃方に此機に存す 歯を食しばって増産に挺進敢闘だ 我等の双肩に国家の運命がかゝつてるのだ体当たりで増産だ
神奈川県下 日本精工株式会社 藤沢工場」
掲載:昭和19年9月

白金は兵器製造に欠かせない重要素材であることから8月15日からダイヤなどとともに一斉買上が開始された。神奈川県でも白金根こそぎ動員と位置づけ熱意を持って取り組んだ。
交易営団が指定機関となり、取次機関は市中の銀行や信託会社が当たった。買上価格は白金99.8%1匁に付26円、これに加工費が加わって61円であった。国策として集中的に新聞広告をうち、松屋も自主的に広告を出している。
内容
「白金緊急買上 献納品モ受付マス
敵ハ迫ル 一刻モ早ク買上ニ応ジテ下サイ 則金買上(鑑定ヲ要スル場合ハ預証ヲ発行ス)
取扱所(神奈川県下)横浜松屋。県下各銀行。信託会社
買上価格 一匁金六十一円。付属品モ買上ゲマス
横浜市中区山下町五八 交易営団横浜支部
出張買上第一回 小田原方面 九月二十九日三十日 於小田原市役所会議室」
掲載:昭和19年9月

9月は白金回収が至上命題となっているようだ。軍需省や日本宣伝協会の名前が出ているが、広告主は村松印刷のようである。これぞ国策広告と云えるだろう。
内容
「必勝のために 白金を急げ
軍需省 社団法人日本宣伝協会
横須賀市大瀧町三八 村松印刷株式会社」
掲載:昭和19年9月

前広告と同じ趣旨である。ただし文言が「必勝のために」が「決勝のために」にと何故か変えられている。今の感覚では多少意味合いが違っているように感じる。広告主はこれも同じ横須賀市内の大濱鉄工所であるので、この白金シリーズ広告は横須賀市内企業向けに広告を募ったものか。同社は翌日にも同じ広告を出している。
内容
「決勝のために 白金を急げ
軍需省 社団法人日本宣伝協会
横須賀市日町一ノ二〇 大濱鉄工所」
掲載:昭和19年9月

日本製鋼所今月3回目の広告。文言は同じだが、またまたイラストを変更した。前回と同じ軍艦の対空砲火で敵機を撃墜した場面である。ただ、少し雑になったか。この先、11月20日と12月15日にも同じ広告を出している。
内容
「量と質と時 目睫に迫った決戦に驕米を叩きつけヤンキーの抱く幻想を粉砕して勝利を確定するものは 量である 質である 時である ”日本製鋼魂”とはどんなものか。増産突撃の戦果で示そう 神奈川県下 日本製鋼所」
掲載:昭和19年9月

またまた、白金広告である。このところ集中して出されている。文言が「必勝のために」から「決勝のために」ときて「決戦のために」と変わってきた。興味深い。
内容
「決戦のために 白金を急げ
軍需省 社団法人日本宣伝協会
横須賀市安浦一ノ二 財団法人横須賀隣人会」
掲載:昭和19年9月
同日の横須賀からの白金広告である。内容がエスカレートしている。
内容
「白金総出陣 決戦へ!白金はねこそぎ出陣させよう 忘れ難い想い出の品もあろう 手離し難い特別の遺品もあろう…… だが皇国危急の秋!あなたの魂をこめあなたの分身として 明日といはず今すぐ送り出そう!
要項 買上場所 百貨店其の他代行機関 取次機関 都市所在の銀行、信託会社本支社 買上期限 十一月十四日まで 買上機関 中央物資□□協会 交易営団 買上値段 一匁六十一円
軍需省 財団法人日本宣伝協会 横須賀市□□」
掲載:昭和19年9月

前日と同じテンプレートを使った湘南自動車の白金の買上広告。ここ数日における白金広告の集中度はすさまじい。
内容
「決戦のために 白金を急げ
軍需省 社団法人日本宣伝協会
横須賀市大瀧町四六 湘南自動車製造株式会社」
掲載:昭和19年9月

富岡兵器製作所、なんと今月4回目である。文言は今月の1回目を使い回しているが、イラストは変えている。機上から敵機を撃ち落としている場面であるが、友軍機も登場し、空中戦の模様である。
内容
「見よ! 吾が新鋭機銃の威力を 敵機は火を噴いて墜ちる 今日も前線の空で我荒鷲は一撃のもと仇敵をたゝいている 送れ、飛行機を!造れ、兵器を! 吾等の造る兵器は 直接鬼畜をたをすのだ 吾等の懸命な努力が 直接将兵の力となるのだ 総てが戦場だ 今日が決戦だ 勝ち抜く為に さあ頑張ろう
神奈川県下 大日本兵器株式会社富岡兵器製作所」
掲載:昭和19年9月

横須賀隣人会の今月2回目。前回と全く同じかと思いきや、「決戦」を「決勝」に変えている。何故だろう。
内容
「決勝のために 白金を急げ
軍需省 社団法人日本宣伝協会
横須賀市安浦町一ノ二 財団法人横須賀隣人会」
掲載:昭和19年9月

先月と同じテンプレート。出稿者は勿論異なる。
日本鋳造とは大正9年、浅野総一郎が鶴見で創業した会社である。社名の通り鋳物工場である。
内容
「必勝のために 白金を急げ
軍需省 社団法人日本宣伝協会 日本鋳造株式会社」
掲載:昭和19年10月

富岡兵器製作所。先月に引き続き、同じテンプレート、文言なのだが、富岡の名前が消されている。こんなところにも当局の規制がかかっている。
内容
「我等の汗でB29を撃墜せん 不遜傍若にもわが皇土侵冠を狙うB29、これを撃墜するものは我等の作る兵器だ。即ち我等の汗の結晶が米機を撃墜するのだ 今一段と頑張ろう 今一段と増産せん
神奈川県下 大日本兵器株式会社〇〇兵器製作所」
掲載:昭和19年10月

「県内を回って出張買上を行うとは、まるで献血のよう。また「白金だ 決戦だ」を二度繰り返すなど、アッピール度が凄まじい。白金回収の切実さが伝わってくる広告。
内容
「白金だ 決戦だ 今すぐ売りましょう 軍需省
取扱場所 横浜松屋、県下銀行信託会社
◎出張買上(八時ヨリ四時迄)
鎌倉市役所(自十月二日至四日) 平塚市役所(自同六日至七日) 横須賀市役所(十月九日) 横須賀さいか屋(自同十日至十一日) 川崎市小美屋(自同十二日至十四日)
即金で買上ます
代行 横浜市中区山下町五八(電代表本局六一五六) 交易営団横浜支部
決戦だ 白金だ」
掲載:昭和19年10月

またまた白金供出の広告。9月からこのパターンが多く、広告主が異なるためか少しづつデザインを変えているのが興味深い。
内容
「決勝のために 白金を急げ
軍需省 社団法人日本宣伝協会
横須賀市公郷町二二二九 合資会社花崎組」
掲載:昭和19年10月

日本精工今月1回目の広告。テンプレートは先月のものを使い回し、文言も同じであるが、唯一工場の所在地が消されている。
内容
「驕米の反攻は飛行機の数が力だ 乗員が腰抜けでもその数は馬鹿にはならない 攻勢転移は一に飛機だ 歯には歯だ 量には量だ 今こそ決死増産だ 神奈川県下 日本精工株式会社 〇〇工場」
掲載:昭和19年10月

9月に続く広告。同じテンプレートを使用しているが、文章は前月よりグレードアップし、通信機の重要性をさらにアピールしている。
内容
「勝敗は一分秒に在り 通信機は艦隊の目だ、航空機の耳だ わが艦隊、わが荒鷲の神技に、われらも神技を振って無敵の通信機を送らん
神奈川県下 富士通信機製造株式会社」
掲載:昭和19年10月

池貝自動車製造とは、明治22年創業の池貝が昭和12年に 陸軍向け車両製造の子会社として設立したもので、997式軽装甲車などのディーゼルエンジンを製造していた。昭和27年に小松製作所に吸収合併される。
本体の池貝鉄工所は、平成13年民事再生法の適用を受け、台湾企業の傘下に入った。9月の横須賀隣人会と同じテンプレートを使用している。
内容
「決勝のために 白金を急げ
軍需省 社団法人日本宣伝協会
池貝自動車製造株式会社」
掲載:昭和19年10月

縦型で、9月の大濱鉄工所と同じテンプレートを使っているが個人名の広告である。佐野伴治とは横須賀の翼賛壮年団長である佐野病院長であり、ペリー上陸記念碑の破壊を主導した。
内容
「決勝のために 白金を急げ
軍需省 社団法人日本宣伝協会
佐野 伴治」
掲載:昭和19年10月

石川島航空工業とは昭和16年に航空発動機部(昭和11年に創設され海軍の航空用発動機を製造)が分離して、新設されたもの。広告の常連会社であり、9月と同じ文章だが、テンプレートを変更している。イラストは出撃していく仲間たちに帽振れをしている情景なのであろう。
内容
「勝利の鍵 正に飛行機 飛行機さへあらばと前線将兵は歯ぎしりしていると伝う 悲痛なるこの叫びは我等飛行機生産戦士の胸を咬む 頑張るのは今だ 増産するのは今だ 神奈川県下 石川島航空工業株式会社」
掲載:昭和19年10月

石川島芝浦タービンは、昭和11年に石川島と芝浦製作所の共同出資で設立されたタービン製作工場で、工場は鶴見にあった。太平洋戦争に入り、軍需工場に指定され、昭和18年松本に大工場を建設、さらに辰野、木曾、伊那に工場を建設した。主に航空機用排ガスタービン、過給機などを製造していた。 今までは、航空機関係ならなら飛行機、造船関係会社なら船を造れと呼びかけていたが、この会社は両者を対象にしている。両者の部品を製造しているからであろう。
内容
「飛行機を送れ!船を送れ! 前線よりの声を聞け 量をたのむ驕敵と南の海に、大陸に血みどろの戦いを戦い抜く 皇軍将兵の血の叫びだ 飛行機も船も吾等の手で造るのだ 我等の一日の勤労で鬼畜幾百をたゝきつぶすのだ 我等一ヶ月の汗の結晶で米鬼幾千をたゝきつぶせ さあ働け英霊に応えて 神奈川県下 石川島芝浦タービン株式会社」
掲載:昭和19年10月

お馴染み、白金供出の広告だが、新たなコピー「兵器を造るために」が登場。広告主は軍港横須賀の百貨店「さいか屋」である。
内容
「兵器を造るために 白金を
軍需省 日本宣伝協会
横須賀市大瀧町一五 株式会社 さいか屋」
掲載:昭和19年10月

四つ前と同じテンプレートを使っている。上記のさいか屋と同じ10月6日の紙面であり、広告主の松田組とは土木請負業社である。
内容
「決勝のために 白金を急げ
軍需省 社団法人日本宣伝協会
横須賀市日ノ出町二ノ五 松田組」
掲載:昭和19年10月

先の松田組であるが、翌日の紙面にテンプレートを変えて出してきた。
内容
「兵器を造るために 白金を
軍需省 日本宣伝協会
横須賀市日ノ出町二ノ五 松田組」
掲載:昭和19年10月

久しぶりの浦賀船渠の広告。国民総突撃を戦場や生産、輸送の現場のイラストで表現しているのだが、印刷が非常に荒いのはどうしたのであろう。
内容
「大和一致で総突撃だ!! 神奈川県下 浦賀船渠株式会社」
掲載:昭和19年10月

日本精工今月2回目の広告。テンプレートは先月のものを使い回し、文言は10月のものを利用。というように国策広告の常連日本精工は、使い回しで広告を出していることがわかる。
内容
「驕米の反攻は飛行機の数が力だ 乗員が腰抜けでもその数は馬鹿にはならない 攻勢転移は一に飛機だ 歯には歯だ 量には量だ 今こそ決死増産だ 神奈川県下 日本精工株式会社 〇〇工場」
掲載:昭和19年10月

常連、日立造船10月1回目の広告。9月に出した2回の広告のテンプレートを文章を入れ替えて使っている。日本精工と同じやり方である。
内容
「こゝに敵の野望を砕く一つの道がある 船だ、船だ、船だ!船を造ろう この船は鉄をはこんでくる この船は油をはこんでくる この船はボーキサイトをはこんでくる この船は つはものを 弾丸を 飛行機を つんで まっしぐらに 戦いの海をゆく この船が波濤を越え 敵潜をふみつぶし 爆撃のスコールをつき 勝利の日へ ひとすじの航路をひく 船だ、船だ、船を造ろう! 神奈川県下 日立造船株式会社神奈川造船所」
掲載:昭和19年10月

大日本兵器の10月1回目の広告。同じテンプレートを使っているが、文章は、最新ネタの台湾沖縄への敵機襲来を利用している。さすがである。
内容
「調子に乗って驕米は台湾沖縄を侵寇盲爆す されど見よ わが航空部隊は わが制空部隊は 之れを邀撃し 之れを攻撃し □□撃墜 敵空母を撃沈破す 今こそ我等の作る兵器が火を吹くのだ。米鬼を叩き落すのだ。戦果につづいて増産の戦果を挙げよう。
神奈川県下 大日本兵器株式会社〇〇兵器製作所」
掲載:昭和19年10月

石川島航空工業今月2回目の広告。1回目と同じテンプレートだが、文章を最新の大戦果を使って増産の掛け声につなげている。
内容
「台湾東方海面の我大戦果は 一に飛行機だ 体当り勇士が魂の勝利だ 今こそ勝って兜の緒を締めよう 残存敵艦隊は我らの作る飛行機で屠るのだ! いざ入魂の大増産へ 神奈川県下 石川島航空工業株式会社」
掲載:昭和19年10月

大日本兵器の10月2回目の広告。また同じテンプレートを使い、前回同様、大本営発表の虚偽の戦果が国民の増産意欲の動機付けに利用された。
内容
「勝利の神機正に至れり おぞましくも物量に驕れる敵米機動部隊に我航空部隊は殲滅的痛打を喰わした 戦史空前の赫々たる大戦果を見よ 忍んでいた神州日本の怒りが爆発したのだ 今こそ勝利の神機だ 今こそ生産追撃だ
神奈川県下 大日本兵器株式会社〇〇兵器製作所」
掲載:昭和19年10月

台湾沖航空戦の虚偽の大戦果が、国民の戦意高揚、増産意欲に大きな影響をあたえた事が伺える。
内容
「いざや必勝増産へ 戦火に応え飛行機を 造って! 送って! 勝抜こう!
日産自動車」
掲載:昭和19年10月

日本精工今月3回目の広告。文章は2回目と同じだがテンプレートは6月に使ったものを使い回している。
内容
「驕米の反攻は飛行機の数が力だ 乗員が腰抜けでもその数は馬鹿にはならない 攻勢転移は一に飛機だ 歯には歯だ 量には量だ 今こそ決死増産だ 神奈川県下 日本精工株式会社 〇〇工場」
掲載:昭和19年10月

常連大日本兵器10月3回目の広告は、9月2回目の広告をそのまま使用。ただし、工場の場所名は伏せている。
内容
「学徒の通年動員 女子挺身隊の出勤等で飛行機工場の手は揃った 工作機さへあれば忽ち三倍五倍の増産だ 我等の責任は重い 飛行機増産の責任を双肩に工作機増産に突撃だ 神奈川県下 大日本兵器株式会社〇〇工機工場」
掲載:昭和19年10月

10月1日の広告以来、出張買上第2回目の広告。買上場所も増え、白金回収の力の入れ具合がわかるが、そもそも軍需物資としての白金(=プラチナ)は、開発中であった秋水(ロケット戦闘機)の燃料である高濃度過酸化水素水の製造に必要であったようだ。
内容
「追撃だ 白金だ 今すぐ出そう 軍需省
◎出張買上(第二回)(九時―四時)
藤沢市役所(十月二十八日、二十九日) 鎌倉市役所(同 三十、三十一日) 横須賀さいか屋(十一月一、二日) 平塚□島デパート(同 四、五日) 厚木町役場(同 七日) 津久井地方事務所(中野町 同九日) 小田原市役所(同 十一、十二日)
◎常時取扱場所(九時―四時)
横浜松屋、県下銀行、信託会社
新設 一、神奈川会館前、坂安店内 一、伊勢佐木町入口、萬太店内
横浜市中区山下町五八(電本局六、一五六) 指定機関 交易営団横浜支部
足らぬ白金 売れ白金」
掲載:昭和19年10月

こちらも常連國華産業。久しぶりにイラスト入りの大きめの広告である。
内容
「撃滅 増産で撃滅だ 今こそ国民決死の総突撃 さあ馳せ参ぜよ生産戰へ
神奈川県下 國華産業株式会社」
掲載:昭和19年10月

常連大日本兵器10月4回目の広告。前回のテンプレート使って、早速フィリピン東方沖の大戦果を持出し、工作機械増産の動機づけに利用している。この後、30日付けで5回目の広告を出しているが、今月2回目と全く同じものである。
内容
「今日も又 感激の涙で聴いた赫々の戦果の放送 飛機あればこの通りの大戦果なのだ。比島攻防決戦正に酣の秋 体当たりで増産だ それには飛行機製作の母”工作機械”の増産が先決問題だ 我等の全工場 増産へ総突撃だ 神奈川県下 大日本兵器株式会社〇〇工機工場」
掲載:昭和19年10月

白金供出の定番テンプレートによる個人の出稿である。
内容
「兵器を造るために 白金を
軍需省 日本宣伝協会
横須賀市若松町八八番地 野口渉」
掲載:昭和19年10月

大日本兵器10月6回目の広告。4回目のテンプレート使って、出だしの文章だけ最新の情報に変更している。
内容
「今日も亦 レイテ湾頭に米鬼を撃砕している 飛機あればこの通りの大戦果なのだ。比島攻防決戦正に酣の秋 体当たりで増産だ それには飛行機製作の母”工作機械”の増産が先決問題だ 我等の全工場 増産へ総突撃だ 神奈川県下 大日本兵器株式会社〇〇工機工場」
掲載:昭和19年10月

久々、佐倉鋼鉄の広告。同社は金庫を主とする鋼製家具メーカーであり、軍需品も製造していた。内容はともあれ、ペリリューの戦いの情報が共有されていた事が分かる。
内容
「飛行機を送れ 航空機の決戦だ! 飛行機をペリリュー、レイテの決戦場へ 今急ぐ補給せよ 女子よ来たれ決戦の職場へ
神奈川県下 佐倉鋼鉄工業株式会社」
掲載:昭和19年11月

先月に引き続き、当局からの白金供出の広告。「保有禁止」という文言まで出して強制的に集めようとしていることが分かる。
白金は、「秋水」の燃料に使う過酸化水素を造るのに必要な物質であった。
内容
「勝つ白金 保有禁止だ 皆出そう 本月十五日迄に売るか又は銀行や信託に譲渡申込書を出しましょう 申込は書面だけ(住所氏名品名数量) 軍需省
◎出張買上
小田原市役所(十一月十、十一、十二日) 鎌倉市役所(同 十三日) 逗子市役所(同 十四日)
◎買上所(十五日迄)
松屋、萬太(伊勢佐木町)、坂安(神奈川会館前)小美屋(川崎)
交易営団横浜支部 急げ白金」
掲載:昭和19年11月

大日本兵器11月13日の広告は、10月3回目の広告と同内容なのだが、何故か縦横のサイズ比が異なっている。11月19日にも全く同じ広告を出している。
内容
「学徒の通年動員 女子挺身隊の出動等で 飛行機工場の手は揃った 工作機さえあれば忽ち三倍五倍の増産だ 我等の責任は重い 飛行機増産の責任を双肩に工作機増産に突撃だ 神奈川県下 大日本兵器株式会社〇〇工機工場」
掲載:昭和19年11月

今のエネオスの前身の一1年ぶりの日石の広告。文言は同じだが、イラストが入って、ポップなフォントに代わっている。製油所の場所名も消えた。
内容
「空の決戦!石油戦だ!!
日本石油〇〇製油所」
掲載:昭和19年11月

9月以来の日立造船の広告。その時の一篇の詩のような文章を使っている。後段を少し省略しているが、造船への熱い思いが伝わって来る。
内容
「こゝに敵の野望を砕く一つの道がある 船だ、船だ、船だ!船を造ろう この船は鉄をはこんでくる この船は油をはこんでくる この船はボーキサイトをはこんでくる この船は つはものを 弾丸を 飛行機を つんで まっしぐらに 戦いの海をゆく 船だ!船だ!船を造ろう! 神奈川県下 日立造船株式会社〇〇〇造船所」
掲載:昭和19年11月

当局からの銀供出の広告。最初は鉄、銅から始まり、金、白金、そして銀まで集めなければ戦争遂行が困難という事であり、資源小国日本の限界が近づいている。
内容
「航空決戦に銀の供出を急げ! 銀は航空発動機の軸受に絶対必要だ (目下即金買上実施中)
大蔵省 軍需省 神奈川県 中央物資活用協会」
掲載:昭和19年11月

昭和10年、蒲田で創業されたゲージ専業メーカーで、現在の黒田精工の初広告。挟範とはゲージのこと。イラストに高射砲が描かれているが、今月B29による東京初空襲が行われた。
内容
「ゲージを作れ レイテ湾に群る驕米撃滅の勝機は今だ、今だ! 今こそ飛機を船舶を、兵器を必死で増産だ この増産の鍵こそ精密な検査器だ 吾らの作るゲージだ 来たれ!決戦の戦場へ!
神奈川県下 株式会社 黒田挟範製作所」
掲載:昭和19年11月

同社10月1回目の広告と文章は同じでイラストを変更している。10月は出撃していく仲間たちに帽振れをしている情景であったが、今回は工場で生産に勤しむ工員の姿である。
内容
「勝利の鍵 正に飛行機 飛行機さへあらばと前線将兵は歯ぎしりしていると伝う 悲痛なるこの叫びは我等飛行機生産戦士の胸を咬む 頑張るのは今だ! 増産するのは今だ! 神奈川県下 石川島航空工業株式会社」
掲載:昭和19年12月

日本精工今月1回目の広告。過去のテンプレートの使い回しだが、文章を見ると、航空戦力が戦争の帰趨を決定するという事が理解されていたことが伝わって来る。
内容
「決戦場レイテへ飛行機を送れ 補給戦に勝って此の神機を生かせ 神風特攻隊の神霊に応える 唯増産あるのみ! 神奈川県下 日本精工株式会社 〇〇工場」
掲載:昭和19年12月

今月は各社ともレイテ戦に言及しているが、それだけこれが天王山の戦いという事が伝わっていたようだ。イラストもリアルな戦場を描いている。
内容
「レイテの戦局 今ぞ分け目 与えよ無双の戦力 吾等の造る機銃弾でレイテの上空から悪鬼の翼を駆逐せよ 補給戦だ!補給戦だ! 頑張ろう― 大日本兵器株式会社〇〇兵器製作所」
掲載:昭和19年12月

日本火工6月以来の広告。同じ内容、同じサイズであるが、戸塚作業所の地名が消えている。
内容
「男女も一億戦闘配置へ急げ! 銃後生産は我等の手で!
神奈川県下 日本火工〇〇作業所」
掲載:昭和19年12月

先月に続く黒田挟範の広告。広告サイズが小さくなっており、先月は「ゲージを作れ」というストレートな主張であったが、今回は遠回しな表現としている。
内容
「配置を急げ! 敵撃滅の決戦場へ 飛機を! 船舶を! 兵器を! この鍵こそ吾らの作るゲージだ
神奈川県下 黒田挟範株式会社」
掲載:昭和19年12月

日産自動車は、昭和19年9月18日に社名を日産重工業に変更した。当時の社会情勢からであろうが、昭和24年8月1日、日産自動車に戻している。
内容
「いざ必□増産へ 戦果に応え飛行機を 自動車を 造って! 送って! 勝抜こう!
日産重工業株式会社 旧社名 日産自動車株式会社」
掲載:昭和19年12月

昭和19年5月にも同じ内容の広告を出しているが、今月はイラスト付きである。
内容
「みたみわれ この大御戦に 勝ち抜かん
女で出来る事は 女手で!
神奈川縣 合資会社 東京螺子製作所」
掲載:昭和19年12月

これは珍しい。食糧営団の国策広告である。昭和17年2月に公布された食糧管理法に基づき設置された組織。国が米麦を配給し、その加工と管理を行うのが食糧営団で府県単位で設置されていた。
内容
「感謝報恩 特攻隊勇士の神霊に 農村の職域敢闘に 感謝の誠を捧げましょう 食生活の工夫も亦吾等のつとめです
横浜市南区南太田町二ノ一一五二 神奈川縣食糧営団 電話長〜」
掲載:昭和19年12月

これは珍しい。県農業会の国策広告であるが、先の食糧営団との抱き合わせ広告となっている。
内容
「驕敵の野望を撃砕せよ 総てが戦場だ 吾等農民も特攻隊勇士の魂を以て 米供出の完遂に 農村職域敢闘に 貯蓄の増進に 総攻撃だ!!
神奈川県農業会」
掲載:昭和19年12月

昭和14年、株式会社芝浦製作所が東京電気株式会社を合併し、東京芝浦電気株式会社が誕生。今の東芝である。東京電気の川崎工場が通信機製造所となり軍事用通信機を製造した。
内容
「驕敵撃滅 通信機 電波機器
東京芝浦電気株式会社 通信機製造所」
掲載:昭和19年12月

国策常連国華産業。今回は大詔奉戴日と3周年の記念広告であろう。
内容
「宣戦の大詔を奉じ 日本民族が みいくさの庭に立った三年前の今日!!! 今や 我ら生産戦士も命倍に必死増産! 断固宿敵を粉砕せむ!
国華産業株式会社」
掲載:昭和19年12月

こちらも開戦3周年を記念した広告。記念枠で出稿した野崎産業とは正体不明なのだが、コンビーフで有名なあの缶詰の野崎であろうか。
内容
「大東亜戦争 三周年を迎う 忘れるな今日を 今や戦局正に最終の決戦期に突入した 一億特別攻撃隊に続け 今こそ国民決死の総突撃 勝利の日まで 断固撃む!!
野崎産業株式会社」
掲載:昭和19年12月

こちらも正体不明の会社であるが、船を送ろうというコピーから造船業界の会社と推測できる。
内容
「補給戦だ! 船を送ろう 前線将兵の忠誠に応えて― 銃後の増産に 頑張り抜こう
神奈川県下 長谷鉄工所」
掲載:昭和19年12月

同日の紙面に農業会の広告も出ていたが、やはり開戦3周年の記念広告と考えられる。しかし、フォントを大きくするとか、もう少し文言を加えるとかしても良かったのではないか。農業会と比べると見劣りするデザインである。時間がなかったのであろう。
内容
「漁業増産追撃戰だ 吾等は水産資源確保に 全力を尽すのみだ
神奈川県水産業会」
掲載:昭和19年12月

9月に続く広告。前回同様のテンプレートであるが、面積が小さくなっている。鷲のイラストは同様。コピーにはレイテが入っており、レイテ戦の勝敗が今後の戦局を左右する重大な局面であることを国民も感じ取っていたのであろう。
内容
「レイテの空を 我が神鷲の翼もて蔽へ われらの尽忠の 生命をこめて 補給戦にも勝ち抜かん 神奈川県下 日本飛行機株式会社」
掲載:昭和19年12
月

9月〜10月には白金供出の広告が出回ったが、今度は銀である。
内容
「敵撃滅へ 銀も出陣! 飛行機の軸承に絶対必要
買上場所 区役所、市町村役場、地方事務所、各百貨店
買上値段 製品一匁に付三十五銭 即日鑑定即金払
買上機関 中央物資活用協会 大蔵省 軍需省 社団法人 日本宣伝協会
献納 日本証券取引所 取引員統制会」
掲載:昭和19年12
月

黒田挟範今月2回目の広告。自社のゲージのことには触れずに、銀の供出促進を訴える国策広告に変貌。何があったのか。しかも株式会社から製作所になっている。
内容
「銀も出撃の秋!敵の息の根を止める 飛行機の軸承に銀は絶対必要! 今こそ 決戦の勝機へ 急速参戦
神奈川県下 黒田挟範製作所」
掲載:昭和19年12月

初広告であろう。東亜企業とは、大正13年創業の石材加工の会社であるが、昭和11年、新山下地区に木材加工工場を開設。軍の指定を受けて航空機用木材専用の製材工場として活躍した。
よって、造れ飛行機の広告となるのである。
内容
「造れ 飛行機
東亜企業株式会社〇〇工場」
掲載:昭和19年12月

9月から始まった白金供出の国策広告。12月は初である。広告主はなんと製薬会社で、オバホルモンとは女性の整理調整薬。
内容
「あなたの白金を 敵撃滅の兵器に! すぐ最寄買上所へ
帝国臓器のオバホルモン」
掲載:昭和19年12月

今月は銀供出の広告が増えてきている。
内容
「航空決戦へ銀を急げ
〇常時買上場所(十二月十五日) 横浜 松屋 野澤屋 横須賀 さいか屋 川ア 小美屋
〇巡回買上場所日時 回覧板其他に依り御承知下さい
大蔵省・軍需省 神奈川県 中央物資活用協会」
掲載:昭和19年12月

今月は銀供出の広告が増えてきている。
内容
「銀 即金買上開始 十二月十五日より 銀供出 神奈川県指定買上場所 横浜市 野澤屋 横浜市 松屋 川崎市 小美屋 横須賀市 さいか屋」
掲載:昭和19年12月

オバホルモン2回目の国策広告。白金の次は銀の供出を呼び掛けている。
内容
「銀出撃 急げ!滅敵の決戦場へ 目下即金買上実施中
オバホルモン製造元 帝国臓器」
掲載:昭和19年12月

今月に入って、銀供出の広告が急に増えてきた。もちろん、紙面の記事でも多く触れられている。残念ながら広告主の名前が判明しない。銀は飛行機の軸受に必須な金属のようである。
内容
「銀を急げ! 航空決戦へ 銀を送れ! 銃後国民の責務だ!
軍需省 市内山下町七二 □里産業株式会社」
掲載:昭和19年12月

文章は変えているが、上と同じテンプレートを使った富士飛行機の7月以来の広告。
内容
「銀を出せ! 一機でも多くの飛機を造る爲に 銀を送れ! 急げ最後の機会だ
軍需省 神奈川県下 富士飛行機株式会社」
掲載:昭和19年12月

銀供出の広告もエスカレートしていく。
内容
「レイテへ 銀も出陣! 敵の息の根を止める飛行機の軸承に絶対必要! 根こそぎ供出しよう
買上場所 区役所、市町村役場、地方事務所、そのた府県指定の場所
買上値段 製品一匁に付三十五銭 即日鑑定即金払い
買上機関 中央物資活用協会 大蔵省 軍需省 社団法人 日本宣伝協会
献納(イロハ順) 日本電建株式会社 東京海上火災保険株式会社 カネボウ□□□ 満洲電業株式会社 国際電気通信株式会社」
掲載:昭和19年12
月

銀供出を訴える広告が次から次へと出てくる。これは日立製作所のもの。社名の前に社章が付いているようだが、とても珍しい。活字を造ったのであろうか。
内容
「航空決戦に銀を急げ! 日立製作所」
掲載:昭和19年12月